生命の時計から考える健康生活 フォロー

夜、寝室で見るスマホの光が体内時計を狂わせる

柴田重信・早稲田大学教授田原優・カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

 体内時計は私たちの体の中の細胞一つ一つで働いています。その時計がどこにあり、どのような仕組みで動いているかは長くはっきりしなかったのですが、今から20年ほど前に「時計遺伝子」が発見され、体内時計研究は一気に加速しました。時計遺伝子の働き方やそのタイミングを見ることで、それまでは「体内時計の乱れ」とあいまいに表現されていたことが、「何によって、何分くらい、体内時計が遅れる、進む」と精密に調べられるようになったのです。そして時計遺伝子が刻む体内時計が狂うと、がんや糖尿病、高脂血症などさまざまな生活習慣病の発症リスクが高くなることが、マウスなどを使った実験やヒトでの疫学調査で分かってきました。それらの成果を基に、これから具体的に体内時計と健康生活との関係を解説していきたいと思います。

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早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。